親知らずとは?
親知らずを抜くかどうかは、その状況に応じて異なります。特に問題がなければ放置も可能ですが、多くの場合、奥に位置するため十分なケアが行き届かず、虫歯になりやすいです。また、親知らずの存在が歯並びに影響を及ぼしたり、手前の歯に虫歯を引き起こすこともあり、これらが抜歯を検討する要因となります。
一方で、手前の歯が欠けた場合、健全な親知らずはブリッジの支えとして活用できることもあります。さらに、残った親知らずを保存治療や再生治療に利用する可能性もあるため、状況に応じた判断が必要です。
親知らずのケアで大切なのは、丁寧な歯磨きです。最奥にあるため歯ブラシが届きにくく、斜めに生えている場合も多いため、磨き残しやすい部分です。親知らずを健康に保つには、特に注意して日々のお手入れを行うことが重要です。
親知らずについて
親知らずの痛みの原因
親知らずが部分的に歯肉に覆われていると、歯ブラシが届きにくくなり、細菌が溜まりやすくなります。この細菌感染による炎症を「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」といい、腫れや痛みを引き起こします。炎症が進行すると、口が開けにくくなったり、痛みと共に発熱することもあります。
さらに、疲労やストレスで体の抵抗力が低下すると、炎症が発生しやすくなるのも細菌感染の特徴です。
妊娠中に智歯周囲炎が起こると、抗生物質の服用が必要になることもあり、妊婦さんにとって精神的な負担となる場合があります。そのため、妊娠を考えている女性には、事前に親知らずの抜歯を検討することをおすすめしています。
親知らずの疾患
親知らずの抜歯は、正常な位置に生えている場合には他の歯を抜くのと同様に比較的簡単に行えます。しかし、親知らずが骨の中に埋まっている場合や、根の形が複雑な場合には、歯肉を切開し、骨や歯を削る処置が必要となり、慎重な対応と時間が求められます。また、親知らずの状態や患者様に持病がある場合には、入院や全身麻酔の下での抜歯が適切と判断されることもあります。
「親知らず」は必ず抜かなければならない歯ですか?
抜歯が推奨される親知らずのケース
痛みや腫れがある場合
親知らずが磨きにくい位置にあると、虫歯や細菌感染による歯肉炎、歯周炎を引き起こしやすく、痛みや腫れを伴うことが多いです。虫歯が進行していたり、歯肉が腫れて触ると痛い、膿が出るなどの症状がある場合は、抜歯を検討することが一般的です。
生え方に問題がある場合
親知らずはスペース不足から横向きや斜めに生えることが多く、隣接する歯を押してダメージを与えたり、歯並びを乱す原因になることがあります。例えば、横向きに生えた親知らずが隣の歯を圧迫し続けて歯根を損傷するような場合も、抜歯が考慮されます。
歯肉の炎症で顔が腫れたり、口が開きにくい状態が続く場合
抗菌薬や痛み止めを使用しても改善しない場合には、抜歯が必要となることがあります。
抜歯が不要な親知らずのケース
正常に生えて機能している場合
痛みや腫れがなく、通常の歯として機能している場合は抜歯の必要がありません。健全な親知らずは、ブリッジや入れ歯の支えとして利用できることがあるため、特に問題がなければ抜かないほうが良いでしょう。
横向きまたは歯茎に埋まっている場合
痛みや腫れなどの症状がない場合、すぐに抜歯する必要はありませんが、歯並びに影響を及ぼさないか、定期的に状態を確認することが大切です。時間が経過して症状が現れた際には、抜歯を検討することもあります。
「親知らず」抜歯の流れ
1 レントゲン撮影
2 表面麻酔と抜歯開始
3 歯茎の切開と歯の分割
4消毒と縫合
5術後の薬の服用と消毒
6 抜糸
親知らずの費用
親知らずの抜歯費用:5,000円〜10,000円程度(※口腔内の状況により変動する場合があります)。
「親知らず」抜歯後の注意事項
<避けるべき行為>
出血が止まりにくくなる原因になります
• 強いうがいをする
• ストローで飲み物を飲む
• 喫煙
• 手術した箇所に触れる
• アルコールの摂取
• 手術当日の入浴
気をつけること
• 処方された痛み止めは、痛みが出てからではなく、麻酔が切れる頃を見計らって服用する
• 手術当日は安静に過ごし、激しい運動や活動を控える
• 十分な水分補給を心がける
• 熱い飲み物や食べ物を避ける
• 術後しばらくは、柔らかくて噛む力を必要としない食べ物を選ぶ
• 感染予防のため、処方された抗菌薬を指示通りに服用する
以上を守り、術後の回復をしっかりとサポートしましょう。
親知らずのよくある質問
- 炎症を放置すると日常生活に支障が出ることがあります。喉にまで炎症が広がると、飲み込む時に喉の痛みや飲み込みづらさを感じることがあります。また、口を開けたり閉じたりする筋肉に炎症が及ぶと、口が開きにくくなったり、顎に痛みが生じることもあります。さらに、首まで炎症が広がると首が腫れることがあり、最も危険なのは炎症が喉の奥に進行して気道を塞ぎ、呼吸困難に陥ることで生命に関わる重篤な症状を引き起こす場合です。
- 片側の親知らずを抜いたからといって、必ず反対側も抜かなければならないということはありません。同様に、上の親知らずを抜いたからといって下の親知らずを必ず抜かなければならないということもありませんので、ご安心ください。
- 矯正治療を受ける場合、親知らずを抜いたほうが良いケースもあります。矯正後に親知らずが生えてくると、きれいに整えた歯並びが乱れることがあるためです。矯正治療を検討している方は、事前に担当医と相談して親知らずの処置について確認しておくことをお勧めします。
- 親知らずの抜歯では局所麻酔を行うため、手術中はほとんど痛みを感じません。表面麻酔の後に注射麻酔を施すため、安心して受けていただけます。万が一、抜歯中に痛みが出た場合には、追加の麻酔で対応します。ただし、麻酔の効果が切れる2~3時間後には痛みが出ることがありますが、通常は痛み止めで対応できる範囲です。
- 抜歯後は必ず炎症反応が起こり、程度の差はありますが腫れが生じます。これは正常な生体反応で、無理に抑える必要はありません。腫れの程度は親知らずの生え方によって異なり、まっすぐ生えている場合は腫れが軽く済むこともあります。通常、腫れのピークは2日目で、1週間程度で治まります。抜歯後1~2週間以内に重要な予定がある場合は、時期を調整することをお勧めします。